松花堂弁当
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昭和20年代の終わり頃には、春慶塗の松花堂弁当を黒漆塗に変えました。そして、中に入れた器も改めて新しい型を創り出しました。四つの升の右向こうに朱塗りの丸い漆器、左手前には四角の染付の吉の字皿を入れました。

(写真4)
黒漆塗の松花堂弁当
黒漆塗の弁当箱の仕切りの中に丸い朱塗と四角の染付の対比が美しい。
黒塗の四角い箱の中に朱漆の丸い器と四角い藍色の器が対角に配されたのです。色彩と造型と質感のバランスがとても美しい器が出来上がりました。弁当箱の蓋を開けた時に器の美しさが印象的です。(写真4)。この黒塗に変えたときに松花堂の焼印を止めて、瓢形に吉兆の文字を入れた押形に変更しましたが、松花堂弁当の名称はそのままとしました。

湯木氏が試みた「器を弁当箱の仕切りの中に入れる」ということによって、煮汁も入れることが出来るようになりました。従来の弁当箱では汁気のない料理しか入れられなかったのですが、これによって例えば炊き合わせなどの汁気を含んだ柔らかな料理を盛り合わせることが出来るようになりました。また、温かい御飯を盛り込むために小さな蒸籠も升の寸法に合わせて作りました。こうした工夫によって温かいもの・冷たいもの、汁気のものと、それぞれの料理を盛り込むことが出来るようになりました。そうしたことはそれまでの弁当箱の概念を超えた新しい発想といえるものでした。
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