榊原:今、世界は日本料理ブームだが日本人はあまり気付いていない。農業、漁業の技術は大変高いということを、徳岡さん、外国で実感されたはずですが。
徳岡:一番のポイントになっている健康、美容は、日本で培ったものの中にあるのでは。もしくは見た感じ。器にもいろんな柄、焼き方のものがある。海外で感じたのは、日本は異端なんだな、と。北イタリアで現地の市場の魚を使って料理しようとした時、くさくて使えない。30点くらいの料理しか出来なかったのに高評価を受けた。生で食べるための活け締めの技術や、魚の管理意識は日本にしか無い。第1次産業の高い水準を日本人は自覚しておらず、守ろうとしていない。ちゃんと評価してもらう努力をしてない。すごくもったいない。
榊原:食器、食材、料理の腕は世界一だ。農業、漁業関係者はもっと自信をもっていい。
加藤:考えないといけないのは、ほぼ全滅しつつあるカブラ、ナスなどの在来種をどう守るか。徳岡さんらシェフに料理をしてもらって、そのおいしさを見直してもらう仕組みを作らないと。ゆでても変色しない紫のアスパラガスを作るよう種苗会社に頼んだりする食の掘り起こしや、鮮度の高い伝統料理を見直すことは全農の使命だ。
榊原:地域の野菜がだんだん消えている。これはスーパーマーケット文化、アメリカ文化だ。
加藤:全国的に八百屋さんが無くなったことは農業団体の反省が必要だ。苦労や料理法を伝えることができた。スーパーで消費者に評価されるのは価格だが、価値観を変えよう。それには、生産者、消費者、日本の農畜産物のよさを見直してくれる人が組んでいくしかない。
榊原:地域の特徴ある野菜について徳岡さん。
徳岡:「京野菜」と書いた箱が売れたりしているのが現状。京野菜は全部有機・無農薬と思われているようだが、そんなことはない。京野菜はブランド化がうまくいったのだが、いずれ破たんするのでは。
榊原:加藤さん、農業、漁業、地域をどう変えていったらいいですか。
加藤:農業者だけで農業を守ろうと思っていた。これは間違い。日本の素晴らしい製造技術を農業へ導入して生産者を高くしていく。もう一つ、有機、無農薬栽培をもっと科学的に突き詰める。他産業の方、環境を考える人と連携して、日本の地域社会を元気にするようにがんばりたい。
写真 加藤一郎氏 榊原英資氏 徳岡邦夫氏