Q東洋と西洋の美意識の違いと共通点はどこにありますか?
真の美しさは、人を感動させ、人間の本質に迫るものです。西洋でも東洋でも、美は最も価値あるものとして探求され、人間を超越した神聖なものに結び付けています。そういった点は万国共通です。とはいえ、環境や文化の違いによって評価が異なることはあります。たとえば、日本の茶道は、同じ文化をもっていない西洋人におって、その高度に洗練された美の形をすぐには理解できないのです。
Qでは食文化についてはどうでしょう? フランス料理と日本料理の共通点はあると思いますか?
これについては、違う点よりも似ているほうが多いでしょう。たとえば、どちらの料理も素材の持ち味を生かし、それぞれを巧みに組み合わせながら、程よい調和を産んでいるところが共通していますね。さらには、食に関する社会的習慣も似ていると思います。どちらの国にも、伝統的な「宮廷料理」がありましたし、そういった特定の料理は客人をもてなすという特別な場所でしか供されないところなど、食を文化としてとらえている点ですね。現代では友人や仕事のパートナーと特別な楽しみを共有できる機会であるなど、両国が食文化を重要視しているところに共通点があると思います。
Qなたは日本についてたいへん詳しいそうですね? お気に入りの場所を教えてください。
東京と京都がとても好きです。東京は、活気にあふれ、現代をきわめて個性的に表現しているところが大好きです。港から見た空の景色や、伝統と現代が融合されている青山近辺が印象的です。泊まるなら「ホテル オークラ」(1)。特にロビーの雰囲気が好きですね。
京都は、建築物、寺院、庭園の素晴らしさだけでなく、独自で静穏な雰囲気が気に入っています。特に2004年にカルティエが展覧会を開催した醍醐寺(2)はまた行ってみたいですね。日本食で一番好きなのは、お刺身。毎回楽しみにしています。
Qカルティエのジュエリーには、東洋的な感性を反映したデザインがいくつかあります。こうしたデザインはいつ頃から取り入れられたのでしょうか?
初めて東洋的な発想を作品に取り入れたのは、19世紀の終わり頃。20世紀初頭のメゾンを引き継いだ、創始者の孫であるルイ・カルティエは、オリエンタル アートの収集家でもあったので、彼自身による教養と好奇心によって生まれたといえるでしょう。
Q伝統と革新というカルティエのスタイルはどのように作られるのでしょうか?
もの作りの観点からいうと、伝統と革新のバランスをはかるだけでなく、恒久的に革新を続けるためにカルティエは伝統を重んじています。当社では、そうした極めて独特な創作方針を打ち出しています。そして現代のお客様のライフスタイルに合った商品を永遠に提供し続けていきます。カルティエには、より伝統的な表現を用いた作品もありますが、時が経てば、そうした作品の中に「カルティエの言語や表現方法」の進化を感じとっていただけると思います。