Q東洋と西洋の美意識の違いはどんなところにありますか?
『マドリッド・フュージョン』や『サローネ・デル・グスト』などの海外のイベントに参加して気が付いたのは、ほかの国同士はたくさんの共通点があるのに、日本だけは違うんですよ。というのは日本以外のところでは、“統一感”がよしとされるんですね。たとえば、西洋料理なら全コースを白いお皿で通すとか、キャンドルとシャンデリアをコーディネイトする、とか。でも日本は違うでしょ?ガラスの器もあれば、漆器に磁器もあるし、色彩も形もいろいろ。あえて揃えない、複雑な組み合わせの中に相乗効果を求めるのが、日本の美意識だと思うんですよ。
Qそれは違うもの同士でも調和させるということでしょうか?
というより違いを利用して、お互い際立たせるというほうが近いかもしれません。成功する確率は少ないですが、可能性ははるかに大きくなると思います。海外の文化に影響を受けて時間をかけて日本独自の形を作ってきたわけですよね。そういうことが得意なんですよ、日本人は。それが日本の価値観なのだと思います。でもそれを西洋人は認めないでしょ?
Qでは、融合は難しいということでしょうか?
『東洋と西洋の融合』という発想は実に日本的なんです。海外の人は融合しようなんて思いませんよ。最近は日本料理が海外で注目されているので、フレンチでも取り入れている人もいますが、日本との融合ではなく、フレンチだと言い切るんですよ(笑)。日本人は謙虚が美徳だから難しいとは思いますが、彼らのように自己アピールをすることも意識していかないと、日本文化が消えてしまかもしれませんね。
Q徳岡さんは海外とのコラボレイションも多くされていますね?それはなぜでしょうか?
以前バカラの器のコラボレイションをし、今もリチャード・ジノリやシャンパンのメゾンとのコラボブランドを作ろうと計画中です。人が喜ぶには何か?と考えるのが好きですし、それが吉兆の存在意義でもあるのです。まずは、料理を提供して喜んでいただけるということが根本ですが、先代から受け継いだものの可能性に挑戦することも、必要なのです。
Qフランスでのお気に入りの場所や宿を教えてください。
10年前に新婚旅行で訪ね、昨年末10年ぶりに再訪したシャンパーニュ地方の「シャトー・レ・クレイエール」(3)は、以前と変わらず素晴らしかったです。そこには日本人のシェフがいらして、一緒にビストロに行ったりして思い出深いですね。あとは、パリの「オテル・ド・クリヨン」(4)にあるジャン=フランソワ・ピエージュのレ・ザンパサドゥール=Bアイデアばかりが先行する3ッ星が多いけど、ここは味も雰囲気もよかったです。
Q最後にカルティエの印象は?
奥さんが好きで、同じような時計をいくつかもっています。
女性って不思議ですよね(笑)。