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料理だけではない。掛け軸の意味について聞かれれば答える知識が必要だし、客にはお花やお茶の関係者も多いだけに、その方面の教養も必要になる。そこで稽古事への援助金を出すようにした。書道の月謝はすべて店が負担するし、お花やお茶を習う場合には3分の1の援助が出る。
「個人のスキルアップが吉兆のレベルアップにつながる。花の名前なんて、明日からすぐ役に立ちますよね。お茶だって、器のもち方から足の運び方に至るまで、けっこう短期間で効果が出る。器の知識もつきますし。
ただ、彼女たちによく言ってるのは、年配のお客様が見えたときには、聞かれてもすぐには答えるなと。『この掛け軸はどういうもの?』と尋ねたとき、20歳過ぎの若いのがスラスラと返してきたら、嫌な気分になりませんか?だから、たとえ知っていても、『すいません。聞いてまいります』と一度は引っ込めと。。。そういう配慮も大切なんですね」
ちなみに、この稽古援助制度は、語学やビジネススクールなど、自分を向上させる習い事なら何にでも適用される。
「英語とフランス語はかなりできるのがいますが、外国人のお客様も多いので、日本文化を伝えるという意味でも重要ですよね。ワインや日本酒のソムリエの資格を取る子もいます。ただ、別にすぐ役立つものでなくてもかまわない。要は、色んな視点からものを見られる仲間が欲しいんです。手品だって、全員が同じ方向から見てたらだまされるけど、いろんな角度から見るようにしたら種が分かりますよね。そういう力をもった集団になりたい」
写真:煮物椀の出汁は厳選された水、昆布、鰹節、塩、醤油で作られた「吉兆」伝統の味。二品目に当たるお椀で客に味加減を聞き、次の料理から味付けを変えることも。漆器は遷都1100年記念(1894年)に作られた名作
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