大覚寺から嵐山に向かう途中に足利利尊氏が後醍天皇の菩提寺として建てた天龍寺があります。桜の名所、吉野山で防御(ぼうぎょ)した後醍天皇の霊を慰めるため、山桜を吉野から移植したと伝えられる桜の名所で、後醍天皇の尊像を祀る多宝塔の前の枝垂桜がひときわ鮮やかに花を咲かせているように見えます。当時の庭は夢窓疎石作法と伝えられる名勝で、夢想疎石(むそうそせき)が自ら選んだ勝地「天龍寺十境」を花見を兼ねて歩いて見るのも一興です。
天龍寺門前から大堰川に架かる渡月橋のあたり一帯は嵐山と呼ばれる景勝地。嵯峨天皇が奈良吉野の桜を移植させて以来、花の名所となったのだとか。「吉野の花の種取りし、嵐の山に…」と能の「嵐山」が伝えています。古来、多くの歌人によって歌にも詠まれた嵐山の桜は現在五千本とも言われています。この嵐山の桜を愛で、中国の故・周恩来首相が詠んだ詩の歌碑が亀山公園に立っています。
毎年四月十三日には、数え年十三歳になった子どもたちが大人の知恵を授かりに渡月橋対岸の法輪寺にお参りします。「十三参り」と呼ばれる通過儀礼で、晴れ着を着た少年少女たちの姿も風景に花を添えます。
【天龍寺】【嵐山】 京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町 TEL.075(881)1235 拝観料 庭500円・本道600円 拝観時間 午前8時30分~午後5時30分 市バス「天龍寺前」下車 嵐山電鉄・JR嵯峨野線「嵐山駅」下車
京のさくら紀行 洛西の桜