愛宕神社への参詣路にある「一ノ鳥居」付近に集落ができ、「鳥居本」と呼ばれるようになったもので、一ノ鳥居より東方におよそ五十戸の農村風町家が並び、昭和五十四年に「重要伝統的建造物群保全地区」に登録された界隈(かいわい)です。この路を清滝に向かって歩くと竹林があり、その合間を縫って山桜が楚々とした花を咲かせます。
愛宕山の南東の麓に位置する清滝は、火伏(ひぶせ)の神として知られる愛宕神社の参詣者のための休憩、宿泊施設そして栄えた村落。清滝川に沿って植えられたおよそ二千本も桜が山肌を染めます。
この桜は自生の山桜に加え、昭和初期に清滝と嵐山を結ぶ愛宕電車が開通した際、乗客へのもてなしにと地域の人々が数種の品種の里桜を植樹したもの。その精神は今も受け継がれ、毎年数本ずつの桜の木が植樹され、風景に磨きをかけています。
現在、愛宕電車はなくなりましたが先達の植えた桜は大きく生長し、今も人々の目を楽しませてくれます。
【清滝】 京都市右京区嵯峨清滝町 TEL.075(343)6655(京都市観光案内所) 京都バス「清滝」下車
京のさくら紀行 洛西の桜