延暦三年(784)、桓武天皇が奈良から長岡に都を遷した際、皇后の藤原乙牟漏(ふじわらおとむろ)が藤原氏の氏神・奈良春日大社の心霊を勘請したのが始まり。
嘉祥三年(850)に文徳天皇が社殿を造営し、大原野神社と命名。藤原氏が台頭した平安時代には王族や貴族の崇敬を集め、『源氏物語』の「行幸(みゆき)」の巻でも冷泉天皇が行幸する様子が雅やかに書かれています。
境内の斎庭(ゆにわ)に咲く「千眼桜」は枝垂桜のような枝に一重の桜が無数に咲く珍種で、たくさんの眼があるように見えることから呼称。拝殿前には狛犬ならぬ優しげな牡鹿、牝鹿が迎えてくれる女性的な社です。
【大原野神社】 京都市西京区大原野南春日町 TEL.075(331)0014 拝観料 無し 拝観時間日中境内自由 市バス・阪急バス「南春日町」下車
寺伝によると最澄が創建。一説に、奈良時代に役業者(えんぎょうしゃ)が創建したとも伝えられる勝持寺は、西行が庵を開いたことでも知られています。
歌聖と謳われた西行は「願わくは花のしたにて春死なむ そのきさらぎの望月のころ」と詠むほど桜を愛した僧。自ら植えたと言われる枝垂桜が「西行桜」の名で親しまれ、今も見る人を魅了します。
能の「西行桜」は、桜の下で眠る西行の前に現れた桜の清が、京都の桜の名所を讃えて舞うというストーリー。目覚めた西行が見たのは一面に広がる落花。境内四百五十本の桜が清く散った跡、桜の絨毯(じゅうたん)で埋め尽くされる風情は、西行の夢そのままです。
【勝持寺】 京都市西京区大原野南春日町 TEL.075(331)0601 拝観料 400円 拝観時間 午前9時~午後4時30分 市バス・阪急バス「南春日町」下車
京のさくら紀行 洛西の桜