また、彼は官房長官時代、靖国参拝問題を理由に、首脳会談を行わない中国に対して批判的な発言をするなど、アジア外交に強気な姿勢を示していた。しかし、就任するやいなや侵略戦争を認めた村山談話を指示すると発言し、この訪中、訪韓の最中、北朝鮮の核実験という不測の事態が発生。その際にも中国、韓国との対話をし、小泉政権時代にもつれてしまったアジア外交立て直しへのきっかけづくりに成功している。
この核実験のタイミングは、重要だったと田原氏は指摘する。
「ここ数年の六カ国協議では、日本は孤立していた。北朝鮮の核実験後に中国と韓国を訪問しても、信頼関係回復の兆しを見ることはできなかったかもしれない。しかし、まさに方中韓の最中での核実験で、中韓と日本の関係が明るくなってきた。運も、政治家にとっては大切です」
朝日新聞では、安倍氏の就任前と就任後の違いを、「半化け」「豹変」などと評しつつ、批判しきれずにいる。変節は、彼の信条の弱さなのでは?と問うと、田原氏は否定する。
「官房長官時代の安倍晋三氏は、政治運動家と言っていい。彼は、祖父である岸信介元首相に学び、『美しい国へ』に描かれるような思想を固めていた。しかし、首相になったことによって、国を運営していくという視野に切り替わった。その時から彼は、自らの意見に固執せず、国を動かすということを軸に据えたのでしょう。彼は首相というポストによって、政治家になったんです」
バランス感覚に優れ、しなやかに、新しいスタイルの政治家としてスタートした安倍政権。こちらの予想をいい意味で裏切り“美しい国、日本”を目指していくのかもしれない。
「彼は、これまでの首相に比べて、スタイルもいいし、モーニングがすっきり似合っている。今後に期待したいですね」
新しい政治のスタイルをもつ、安倍氏のこれからの活躍を祈りたい。