2005年から現在も、自伝的小説『東京タワー〜オカンとボクと、時々、オトン〜』で一躍脚光を浴びているリリー・フランキー氏。小説が売れたからといっても彼の肩書きは小説家だけではない。イラストレーター、ミュージシャン、写真家など、枠にとらわれないマルチな才能の持ち主だ。
撮影当日、予定よりも1時間半遅れてスタジオに到着したリリー氏。気だるい調子で、「俺、文化人なんですか?」と、苦笑いを浮かべた。
「『東京タワー〜』は、母への供養を表現したもの。“小説”が一番合う形だっただけです」
タバコに火をつけ、煙を吐く。
「近頃、憂鬱なんですよ。できれば何もせずに暮らしたい。そんな気分の時は文章よりも音楽が似合うから、音楽で表現する。ジャンルを広げてきたというよりも、表現したいことに合った表現方法を選んでいるだけなんです」
静かな声で、朴訥と語る様子は、まさにユルキャラの優男。しかし、見上げたその目の深い光には力がある。
「最近、刺青を師匠について勉強しているんです。これがなかなか奥深い。周りのスタッフ、いつ練習台で彫られるかて、ヒヤヒヤしてますけど」
独自のセンスと視線をもT、枠にはまらず、どんどん先へ進んでいく。その柔軟な感性と行動力のバランスが、彼ならではの魅力であり、同時に今の日本カルチャーに求められているものといえよう。
1963年福岡生まれ。武蔵野美術大学卒業後、小説家、イラストレーター、写真家など、さまざまなジャンルで活躍。『東京タワー〜』は、現在までに200万部を超える大ヒットを記録。2007年には映画も公開。 www.lillyfranky.com