■背景

Masterly demonstration performed by chef Kunio TOKUOKA
20 Jan, 2005 / 13:15〜14:15

1. 始めに
この大会に参加できて光栄です。今回のデモンストレーションを通じて、少しでも皆様のお役に立つ事ができれば光栄です。
本日のデモンストレーションは、日本料理の献立(後程スライドにて)の一つ、「八寸」について紹介いたします。「八寸」についての詳しい説明は後ほど行うとして、先ず、日本、吉兆、日本料理などを知って頂くために、6分程度のショートフィルムをご覧下さい。映像:日本の京都の環境、吉兆の座敷(客室)、厨房の様子、料理(八寸)などの紹介。

2. 背景・概要
海外の方々が日本で食事をして印象に残る事、それが「形」、「盛り付けの違い」、「見た目の違い」なのではないでしょうか?というのも、それが一番具体的に、且つ、簡単に分かる違いだからです。自国の物とは違う事が、食べる前に一目ではっきりと理解できます。反対に、日本的な事や物、考え方は、過去の歴史や島国であることを考えると、大陸繋がりの国々の方々には大変理解しがたいものだと思います。また、このことが、他国にはない独自の日本料理の文化を生み出したことも紛れもない事実だと言えます。例えば、日本は季節だけではなく地形もまた変化に富んでいます。海産物の豊かさは、四方を海に囲まれているという地形的な条件が大きいのですが、周囲を海に囲まれていても、限られた種類の海産物しかとれない国はいくらでもあります。しかしながら、我が国の恵まれている点は、暖流と寒流が交差する地点に位置するというところにあります。 太平洋側では、黒潮(暖流)が南から上がり、親潮(寒流)が北から下がってきます。この二つの海流が日本近海で衝突するために、昔から南から来た魚も北から来た魚も食べることができました。つまり、日本人が世界一の魚食民族になってきたのは、決して偶然ではなく、このような地理的要因が重なったことで、内容の濃い魚食文化を創り上げてきたといえると思います。食生活は、気候や風土に多大なる影響を受けるといえますが、裏を返していえば、それぞれの民族には必ずその気候風土にあった食文化があるということだと思います。その中で、素晴らしい食文化を創造し、旬を愛で、季節毎の新鮮な食材を口にすることのできる日本人は誠に幸せだと思っています。
今回は、その日本が育んだ食文化の中でも、特に「見た目の違い」について、皆さんにご紹介したいと思っています。人間としての共通点はあっても、環境が違う中で育まれた文化を理解し合うのは簡単なようでなかなか難しい事です。その中にあって、今回、一番分かりやすい「見た目の違い」を説明することは、日本の文化を理解し合うための第一歩として、とても適しているのではないかと思っています。
さて、この「見た目の違い」ですが、日本料理の中でこの「見た目」を一番意識し、強調して盛り込んでいる料理が「八寸」と言われるものです。従って、この「八寸」を知って頂くことで、日本文化の一端を知って頂くことになると思いますし、少しでも日本料理を介して交流を深めることが出来れば、非常に光栄に思っています。