■八寸に盛り込んだ料理

「八寸」
茶事では海のものと山のものを合わせて二種、あるいは三種出すという決まりごとがありますが、料亭によっては、品数も料理の内容も様々です。珍味など、酒肴になりそうな料理が数品彩りよく盛られることが多いです。
「八寸」と言う料理には、7〜8種類の一口サイズの料理が盛り合わせになっています。嵐山吉兆では、最近お見え頂く方たちの召し上がる日本酒の量が減少している事を感じ取り、皆さんが楽しんで頂ける様、珍味類は減塩され化学調味料、他にケミカルなものを含有している物ではなく本物の珍味を一工夫して調味料として使うようにしています。また、これらの料理は、ワインの種類にあわせて趣向を凝らすなどといったことも考えています。
今回も7〜8種類の料理を使いますが、盛り込みの方法を重点的に説明しますので、料理そのものについては時間の関係でほぼ完成品を準備しました。盛り込む前にそれぞれの料理の最終的な仕上げを行います。今回準備した料理と簡単な作り方は以下の通りです。

7〜8種類の料理内容は下記の通りです(材料の都合で変わります)。

海老焼霜と納豆のレタス包み
生きているエクルビスを剥き身にし、オリーブをまぶし薄塩をし、表面だけ焦げ色がつくように焼く。その切り身と納豆、みじん切りにした白葱をさっとボイルしたレタスでくるむ。
漬物唐墨和え
漬物に唐墨をまぶす。
根野菜の醤油漬け紫蘇風味
根野菜を醤油に漬け、紫蘇のみじん切りをまぶす。
一味風味の生白身魚の黄身醤油漬け
白身魚、うす塩をし、昆布で挟む。その後、一味をふり食べやすく切り分け、醤油に漬けてトロンと固まった黄身をとめる。その上に木の芽をとめる。

香味野菜の芥子味噌とめ
香味野菜を味付きだしでさっと焚き、同じ味の冷えただしに入れ、色が飛ばないように冷ます。それに卵を加え練り込んだ白味噌に芥子を入れ、とめる。

肉のこぶ締め花鰹節とめ
牛肉をスライスし、塩を振り、昆布の間に挟む。2時間程度おき昆布の旨みが肉に移ったら、食べやすいようにロール状にし、山葵をとめる。
鮒寿司パン包み
鮒寿司とブルーチーズを適量合わせ、バターと芥子醤油をぬった柔らかいパンに巻く。
まぐろ漬け焼霜マッシュ浅葱、芥子とめ山椒風味
マグロを醤油に3分ほど漬け、表面だけ強火の炭火で焼く。その後、切り出し、粉山椒を振り、マッシュポテト、浅葱のみじん切り、フライドにんにくとめる。

この中で珍しいのは、卵の黄身を醤油の中に漬けておくと温泉卵のように凝固することを利用した一品です。原理については、「卵が固まる温度について」を参照下さい。鶏で取ったスープに塩分を足し(濃度が分かれば嬉しい)、その中に入れておくと鶏スープ味の温泉卵が出来、塩牛乳の中に入れておけば、牛乳味の黄身が出来ます。