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ディナーに対する想い Part2

Text by Kunio TOKUOKA
Photo by Chiiho SANO

最後に飲んで頂いたお茶は、国境を超越した人間文化として、東西文化の架け橋として多大な役割を担ってきました。
茶の湯は、宗教の教義を説いているわけではありません。茶の湯の強みは、人間の最も根源的な行為、即ち、人と共に座って、食事をしたりお茶を飲んだりといったことの型や基本を具体的に凝結させていくことにあります。我々が今日、「茶の湯」という言葉で呼ぶものを確立した人、千利休(1522-1591)は、「茶の湯とは、ただ湯をわかし、茶を点てて、呑むばかりなる本を知るべし」と言いました。
茶の湯の世界には、次のような一筋があります。
「今この茶会は生涯でただ一度のものである」(一期一会)
この言葉は、茶会に集まった人々の態度はどうあるべきかを示しており、利休の師である紹鴎の教えに由来しています。即ち、
「庭の小道に入った瞬間からそこを去るときまで、この茶会は生涯ただ一度のものであると心に銘記して、亭主に対して最大の敬意を払わなくてはならない」

 

このひと時、寸時を大切にするという態度は、人と人の出会いの全てに通じる大切なものです。弟子が師から教えを受けるとき、あるいは私たちが同僚や友人や家族に会うとき、今という時の重要性を理解していれば、自ずと真心が現れます。
また、このような「一期一会」の気持ちは料理との出会いにもあてはまると思います。一口で好きになる料理、飲む程に旨くなる酒、個性の強い味、個性は弱いが飽きのこない料理、印象に残る料理、印象に残る盛り付け、未知との遭遇があります。料理も一期一会の繰り返しなのです。世の中に数多くの出会いはあれど、同じ場所、同じ時間の出会い、味は2度とはありません。従って、一つ一つの出会いを楽しみながら、その瞬間を大切にしていきたいと思っています。
さらに、そうした出会いを通して、人と人、人と歴史との出会いが実現します。そこには何百年も昔にその歴史を作った作者との出会いや、時代の変遷を経て愛でられ続けてきたものとの出会いもあります。一期一会の臨場感とはそこから生まれてくるものだと思います。
本日の出会いを大切にしたいと思います。今日ここに縁合ってお会いできた皆様とは、日本とイタリア、場所も文化も歴史も全く異なりますが、全てを超えて一つに融和できるきっかけになれば良いと思っています。同時に、皆さんにとって、本日の料理が忘れられないひと時になればこれほど嬉しいことはありません。

一期一会:生涯にただ一度見えること、一生に一度限りの出会いであること。題は、詩人Browningの詩から取りました。

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