ウォール・ストリート・ジャーナルからの取材
By STEPHANIE GRUNER
SPECIAL TO THE WALL STREET JOURNAL
October 22, 2004
トリノへ向けての準備が最高潮に達しようとしていた丁度その頃、ウォール・
ストリート・ジャーナル(ヨーロッパ版)の担当者、STEPHANIE GRUNERから、記事にしたいとのことで取材を受けた。
イベントに合わせて発売される同雑誌に、スローフード協会のサローネ・デル・グストについての記事を掲載するのだという。
海を渡る日本料理に、海外のメディアも興味津々。さて、彼が記事を書くために日本料理代表、徳岡氏に聞きたかったこととは?
(1)過去、このようなSFのイベントに何回ほど参加したことはありますか?
A:参加経験は、有りません。
(2)今回の参加について、招待ですか、若しくは自分で払っての参加ですか?
また、払っているとしたらどの程度ですか?
A:招待です。
(3)何故、今回のイベントに参加しようと思ったのですか?
A:共感する部分があり、自分自身の考えも 公表できる可能性が有ったからです。
(4)同時に開催される他のイベントにも参加する予定はありますか?
A:1月に 「マドリッド・フージョン」に招待を受けています。
(5)海外におけるこのような食の多様性についての活動に参加していますか?
A:今回が初めてです。
(6)このような活動について、関心ある部分はどのような部分ですか?
A:現代においての食の健全化が大切だと思っております。その為には、食にまつわる事への意識を高く持って頂けるようにする事が重要だと思います。経済が破綻しても人は、何とか生きていけますが、食や自然環境が破綻すれば命の継続はないのですから。優先順位が違うように思います。大切な食の源である自然環境保全や一次産業への意識の低さ、一次産業の意識の低さ等が次世代の為に徐々にでも健全化して欲しいです。そういう事を
食に意識をもたれている方々とその解決方法について意見交換できる所です。意見が正当であればその意見は、多くの人に必要とされ広くの方々の役に立ちます。素晴らしいです。
(7)将来の食の生産等について関心はありますか?もしあるとすれば、どうい
う部分ですか?
A:将来の食の生産等について関心が有ります。歪んだ経済優先方生産が進歩しすぎる事が 地球の崩壊を早めているように思える部分です。
(8)過去5年間に出版した食関係の本などがあれば、タイトル、出版社、価格などを教えて下さい。
A:取材は、多々有りますが 自分自身で書いて出版した事は有りません。
(9)あなたが考える特別な料理、また、今回提供しようと考えている料理など
について説明してください。
A:配布資料参照。
(10)食の生産(食料生産)について、どういう風に変わっていると思いますか、
また、それについてどのように思いますか。
A:環境の変化によって適応していく事は、大切な事だと思っております。
その事は、いつの時代でも行われてきた事のように感じております。 ただ、
近年、特に日本では、その適応方法の価値に多面有る事を知ろうとせず一面だけしか見ずに偏った価値判断をしてしまい、歪んだ経済優先型生産方法だけに価値観が求められてきたように変わってきたと思います。
調理場に居る私には、その事が食材の味をとうして感じられました。 しかし
その時は、何がおかしいのは分かりませんでした。お客様に満足頂ける料理を作りたいと言う思いから料理法を研究したり、仕入れ方法の見直しをしてみたりしましたが、思うような料理にはなりませんでした。そして行き着く所は生産者だという回答になったのです。生産者の実体を知らされ愕然としました。
ただその中にも懸命に努力されている姿を見つけました。より深く、いろいろ
な方の立場を考えるようになりました。そして徐々に社会の歪みを感じるようになりました。一方方向の進化、もしくは方程式的な物の考え方しかしなくなった様におもいます。世の中ではいろいろな事が起こりいろいろな価値観が有ります。その事をもう一度、再確認する為には、フラットな立場でいろいろな方とコミュニケーションする事だと思います。食に携わるものとして食をとうして、そういう場を作る事が出来ると思います。又、生産者と消費者の間に居る事よりその縁を取り持つ事が出来るのです。その事は料理人にとって使命、義務だとも思います。
(11)高品質の食品や栽培に適した環境などの保存・保守していくことについて、何をすべきだと思いますか、また、どういう風に促進すべきだと思いますか。
A:最終的には、ルールを変えるしかないと思っています。政治家の意識を変える事だと思います。その為には、食材を消費する有権者の意識を少しずつでも変えていくしかない様に思います。その為には、いろいろな立場の方々とフラットな立場でコミュニケーションする事だと思います。その結果、ルールが変われば良いなと思います。一次産業の現場に居られる方々が私たちが生き続ける為の食を支えてもらっている事も合わせて考えたいです。重要な立場ですし健全でないと駄目だと思います。同時に、一次産業の現場に居られる方々の報酬は、世の中に役に立っている方の報酬ではない様に思います。改善しないと後継者が無くなるようにも思います。
そして出来るなら、優良健全生産者の集まる地域を作りその地域の健全さを検査、認証する団体と共に信頼を勝ち取りたいです。それが、現代の生産地ブランドの正しい築き方だと思います。
京都では旧来の「京野菜」と言うブランドで無農薬でなくとも、イメージで高額で販売されています。いろいろな価値観はあるにせよ
農薬と言うのは昆虫であるとか雑草の生命を絶つ薬なのです。薄めて使用頻度を減らしても農薬を噴霧すると たちどころに カエルやミミズ、益虫も死んでしまいます。ひどい方は自分の食べる分には
噴霧しない方もいらっしゃるようです。今、害が見えなくとも次世代にはいろいろな形でその害は、及ぼされるでしょう。夏休みの宿題がなかなか出来ないのと一緒でせっぱ詰まらないと出来ないのだと思います。
商売とは人をダマシテお金をもうける事ではなく人の役に立つ事をしてそれに見合う代償を得る事だと思っています。
最後に、無農薬と言うだけで美味しく無い野菜を作る方がいます。それ以上努力しないのです。無農薬と言うだけで売れるのです。美味しく、奇麗で、純粋で、バランスが取れている物、それが食べ物です。そういう事を技術的にも精神的にも教える学校も必要ではないでしょうか?
質問は以上です。
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