徳岡氏は、吉兆邸内に自宅を持つが1日の大半を調理場で過ごす。よって、プライベートの台所も吉兆と同じ。機能性を重視した道具たちのフォルムを美しい
まな板
長さや句2m、暑さ20cmはゆうにある。何枚かあり順番に使っているが、1枚で約10年はもつ。磨り減ると職人に鉋で削ってもらう。まな板に適した材質は、水に強く、包丁の刃が当たっても傷はつきにくく、しかも刃こぼれしない適度な堅さのもの。吉兆ではいちょうの木。良質の木が出た時に、丸太で譲り受け、必要な分を切り出し職人が作る。
片手打出し鍋
片手打出し鍋=雪平鍋は、底が浅くて口径が広く、より熱伝導率を高めるために打ち出された凹凸の表面が特徴の蓋がないアルミ素材の鍋だ。一般的に火の当たりが平均していて、煮もの、だし取り、茹でものなど日本料理には万能の鍋である。主に出張料理の時に用い、ある程度の重みと厚みのある直径15〜24cmの鍋を、使い分けている。
菜箸
契約している竹藪から竹を選び、切り出し、乾燥させ、荒削りから仕上げまですべてを徳岡氏自ら手がける。太さ、長さなど用途に一番適したものに仕上げるのは、培った経験のみ。持ち手はやや太く、しかしその先端は細かくぴったりとあわされるように削られた盛り付け箸。「自分が使いやすいように」生まれたもの。吉兆台所の定番。
包丁
上・使い込まれた柄の部分が、握った圧力で抉られている。ここまでなるのに約10年はかかる。(下の柳刃の柄は変えたばかり)。出刃には徳岡の銘が刻まれ、主に魚や鶏をおろす時に使用。下・刺身包丁用の菖浦(柳刃)は、先代が堺の刀師に作らせたもの(碧龍子)を譲り受けた ※よく切れる包丁で調理すると、見た目はもちろん味にも差が。
お釜
炊く中身により使い分けている。主に、炊き込みご飯はおこげも楽しめる土鍋、白飯を炊くのが真鍮でコーティングされたこの金色に輝く羽釜で、銅製のものもある。通常より羽から上の部分を長め(20cmほど)にすることで吹きこぼれを防ぎ、下の部分は火の当たり(ガス用)に合わせ短めに改良されている。耐久性、熱伝導のよい吉兆特製。