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吉兆の舞台裏 1 お客様を家族≠フように嵐山吉兆で驚くことのひとつに、サービス・スタッフの若さ、同時にそのプロ意識がある。その秘訣は?

95年から徳岡邦夫が嵐山吉兆を受け継ぎ、なしえた改革は数々あるが、そのひとつに人材面が挙げられる。そもそも、老舗の料亭の人材は古くからコネクションや人づてに雇われる……ということが多かった。板場しかり、仲居さんしかり、である。それは、老舗の伝統を守るという面ではプラスに働くということもあるが、反面、人材が硬直化するというマイナス面もあった。しかし、徳岡はそれを嫌い、なんとインターネットを使い、人材を広く募集することを始める。「というか、古くからの人が皆やめちゃったんですよ、僕の代になって(笑)」と徳岡は語るが、古くからのスタッフがほとんどやめた、という事実で、徳岡の改革はぐっと前進したといってもいいだろう。はたして、現在、スタッフは46歳の徳岡の下は30代が数人、あとは20代。そしてほとんどが、普通の会社と同じように会社説明会に行き、面接他の試験を受けて採用されたスタッフは、海外経験豊富な人、語学に堪能な人も多く海外の要人の接客も多き吉兆ならでは。また、学歴がすべてではないものの、4年制大学卒が多いののも吉兆の特徴だろう。そのせいばかりではないだろうが、吉兆の舞台裏は、水商売独特のある種の香りがせず、ある意味「普通のオフィス」の雰囲気に近い。これが現在の嵐山吉兆のカラーとなっているともいえる。

その中でサービス・スタッフ長を務めるのが、26歳の合田有香さん。国立奈良女子大学で古代史を勉強した合田さんは会社説明会での徳岡の「熱いトークに打たれて(笑)」入社を決意した。「この仕事はとにかくお客様に関する情報収集とお客様を家族のように℃vうことが大切」と語る。スタッフが各席の主賓やホストを家族や恋人のように思えば、おのずと各人が求めてることが想像できるはず、という。嵐山吉兆の現在の隆盛は、味だけでなく人にもその要因があるのである。

お客様をお迎えするまで
1:お客様の予約の電話で、お客様の席が商用なのかプライベートなのか、可能な限り聞き出します
2:それぞれの席の目的や季節に応じた飾り物を整えます。掛け軸などもお客様の好み、季節に応じて変えます。もちろんお花も目的に合わせて生けてもらいます
3:過去にいらしたことがあるお客様は、以前の食事をデータしてあるので、どんな方だったか調べます
4:データから、嫌いな食べ物などを調べ、メニューからはずすようにします 大人数で好みが違うときも、可能な限り応えられるように務めています
5:着物の着付けをきちんとし、身なりを清潔に整えます。お化粧も派手すぎないように努めています
6:お客様をお迎えする前に、それぞれの席の内容に応じて打ち合わせします
7:商用、プライベート、ご家族、恋人同士、観光のお客様など、内容に応じてサービス方法を変えます
8:国宝級の陶器、食器を料理にあわせてご用意します
9:部屋のしつらえだけでなく、特別なオーダーがあったときは、旬の走りの食材などを取り寄せることもあります
10:お客様のご来店30分前までに、お部屋を適温にしておきます。お香をたき、打ち水をし、おしぼりをいつでも出せるように温めておきます
11:いよいよお客様のご到着。必ず玄関でお迎えします
12:宴席の始まりです。お客様の目的によって、必ず部屋についているようにしたり(特に商用や接待の場合)、カップルの場合はさりげなく引くようにしたり、サービスの仕方は異なります

 
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